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Story〜君の隣で同じ景色を見る〜

第11章 ep11 繋心





「俺、こうして女の子とデートするってあんまり無かったんだよね」


「え・・・そうなの?」



「うん、バレー部は基本的に月曜日がオフなんだけど、授業もあるし、授業終わりにそんなに遠くまで行けなかったしね。普通の男子高生なら土日は休みだし、そう言う時に彼女とデートしたりするんだよね」





軽快な音楽と人々の足音や笑い声を遠くに聴きながら、及川は静かに自身の事を話した。



「でも、俺は昔からバレーが最優先、バレー中心の生活だったから、それが、当たり前になってて、一般生の彼女が出来ても、我慢させるばっかりだったんだ・・・」




平日は授業が終わればカフェに行ったり遊びに行ったりバイトしたり、土日は昼過ぎまで寝たりして過ごしている普通の高校生からしたら、バレーを中心に回っている及川たちの生活は、想像できないだろう。



「いつも、"バレーと私、どっちが大切なの"なんて言われて振られてたんだ」


「うん・・・・・・」



「どっちも大切だけど、俺にはバレーが最優先になってしまうから・・・それを分かってくれる人は少ない」




寂しそうに目を伏せる及川、彼の目を心配そうに覗き込むと、ばっと顔を上げて、りこを見た。



「だから、今日、バレーとは関係なく普通の高校生みたいにりこと一緒にいられて、俺、凄く嬉しかった」


ありがとう、と笑う及川の手を、りこは両手で包むように握った。




「及川くんの言う、普通の高校生が経験できないこと、及川くんは沢山してるよ・・・?」


「・・・りこ?」



「強いとこでバレーしてるとね、あそこの高校のバレー部なんだね、頑張ってね!とか、あのジャージ着てみたい、カッコイイ!とか言ってくれたりするけど、実際はみんなが遊びに費やしてる時間は練習三昧・・・

みんながお腹抱えて笑っている間に、練習で上手くいかなくて悔しくて声を押し殺して泣いたり、疲れてる体うごかしてしんどい思いしたり、怪我して痛みを堪えたり・・・

全然楽しいことなんてない時がある」



包み込んだ手を見つめて話すりこの言葉は、及川の心に、すとんと入り込んでくる。

うん、うん、と頷けることばかりで、静かにりこの言葉を聞いた。
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