第11章 ep11 繋心
「うん、私は大丈夫!」
「そう?ならいいけどね」
及川はカバンから、以前りこに巻いてもらったクリーム色のマフラーを取り出し、自身の首に巻いた。
「あ、それ・・・・・・」
「ずっと借りててごめんね?これ、暖かいんだよ」
「ううん、それは全然いいけど、持ってきてくれてたんだ」
目を細め、嬉しそうに及川の首元を見上げる。
「勿論」
及川は微笑んで返した。
ーーー・・・
夜になり、寒さが一層強まってきたが、宮城の寒さに比べると、まだ暖かいほうだと感じた。
及川とりこはパーク中央の城から、少し離れたベンチに座って、暫くの間寛いでいた。
「沢山乗ったし、歩いたし、本当楽しかったね」
「うん。及川くん、〇ーさんとか好きだったんだね、意外だった」
先程、とあるエリアで着ぐるみのキャラクターが歩いてきた時の事を思い出す。
目をキラキラさせてそのキャラクターに近づく及川は、まるで少年のようで、りこは及川の意外な一面を見た気がした。
すると及川の頬は一気に上気し、恥ずかしそうに頭をかく。
「へ、変かな?昔、家でビデオでずっと見てて、今でも好きなんだよね、男のくせに」
「ううん、いいと思う。そう言うギャップがあるの、可愛い。」
隣を見ると#NAME#は 膝に肘をつき、にっこりと微笑んでいる。
そんな彼女の言葉に、及川はすぐ舞い上がる。
「じゃあ、筆箱とか〇ーさんにしようかな!タオルとか!」
「う、うん、それは自由だと思うけど、絶対女子のだと間違われるね」
「そ、そっか・・・」
そんな他愛ない話をして笑い合う。
こんな些細な事が、りこは、及川は、幸せだと感じた。
繋いだ手からは確かにお互いの気持ちは感じ取れるが、それを口にするのは、まだ、先な気がする・・・