第11章 ep11 繋心
「わ、見て!あのキャラクター可愛い」
「及川くんは絶叫系乗れる?私、最初は怖いんだけど乗っちゃえば何か悟り開けちゃうくらい冷静なんだよね」
「このポップコーンすごく美味しい!食べてみて?」
夢の国、ディ〇ニーランドを念願のりこと回ることに成功した及川は、彼女の普段見られないような高揚っぷりに正直驚かされていた。
可愛らしく丁寧に装飾されたあちらこちらを見渡し、歓喜の声をあげるりこ。
(りこって意外とこういう所好きなんだな・・・)
パーク内を回る際に、その合間の会話は何を話せばいいのか悩んでいたが、どうやらその悩みは無駄だったようだ。
いつも落ち着き払っているりこは一転し、今はこの場を誰よりも楽しんでいる顔をしている。
勿論、及川はそんな彼女の姿が見れて嬉しい。
新たな一面を自分ひとりがいま、独占しているような気がする。
(まぁ俺は・・・今日これができた事でもう大満足だけどね・・・)
そっと、繋いだ手に力を込める。
パークを回っている間、ずっと繋いでいるこの手。
離れようとせず、しかしそれ以上密着することもなかったが、りこと繋がっていられる何とも言えない嬉しさや愛おしさがこみ上げる。
「あっ、少し歩き疲れた?今日、バレー部は朝早かったんだもんね」
心配そうにりこが及川を覗き込む。
始業式で再会した時より、少し伸びた黒髪がさらりと揺れる。
「えっ?ううん、大丈夫だよ。・・・それより、だいぶ陽が落ちてきたからね、寒くない?」
こう言った些細な気遣いを、りこは良くしてくれる。
お手洗いに行くと言って、待っていた時も帰ってきた時には暖かい飲み物を持ってきてくれたり、カイロを貸してくれたり、
一つ一つの行動が思いやりに溢れていた。