第10章 ep10 繋手
「そんな!俺、は、そのっ、惚れてるとか、そんなっ!」
あたふたと手が面白い動きをする。
そんな彼に、花巻たちは腹を抱えて笑い出した。
「バレバレ過ぎだって!腹いてぇよ」
賑やかな東京行きの珍道中。及川の頭は、相変わらずりこの事でいっぱいだった。
「なにお前ら、まだ付き合ってねぇの?」
「・・・バレンタイン以来、普通にお昼食べてるだけ。岩ちゃんいるし」
「悪かったな、俺がいて」
そういう事じゃないよ岩ちゃん!と、岩泉からの攻撃を避ける及川。
「お互い、意識してるはずなんだけど、中々2人きりになれる時が無くて。りこも俺も、他の子達に囲まれてる事が多くてさ」
さらっと、周囲を苛立たせるのは及川の魅力であると岩泉たちは思った。
まぁ、今は及川は悩んでいるらしく聞き流すことにしたが。
「だから、ちょっと今日、俺、頑張ろうと思ってます!」
そう高らかに宣言する及川。
何を?と言う問も無く、おーがんばれキャプテンとか、当たって砕けろなんて声が飛び交う。
及川はそれに気にした様子はなく、ぐっと握り拳をつくり、士気を高めるのだった・・・
ーーー・・・
「これより自由行動とするー。パーク内へ行くもよし、夜行バスの出発時間までホテルに戻って寛ぐのもよし、学校の名前を背負っているのを忘れず、他人に迷惑のかからない行動をしろなー!」
担任の言葉を皮切りに生徒達のほとんどはパーク内の入場口へ向かう。
りこは、あっけらかんとした表情でその群れを見送る。
「みんな、全力疾走するんだね・・・」
「そりゃ、憧れの夢の国だからねっ。りこ、今日は及川くんと回ったりしないの?」
苦笑いをするりこを、彼女の友人は覗き込む。
「うん、誘われてないし・・・」
「えー!自分から誘っちゃえば良かったのに!絶対OKしてくれるよ!!勿体なーい」
「そんな積極的なこと出来ないよ・・・恥ずかしくて」
無理っと言うようにふるふると首を振る。
「じゃあ私達は2人で回ろっか!」
「うん、よろし」
「りこーーー!!!!」