第9章 ep9 唯一
「義理チョコとか、みんな用意してるものなの・・・?」
「んー、私はまぁ一応ね!でも、本命チョコの方がクォリティも高いよ!」
「へ、へぇ。誰にあげるのとか、聞いてもいい?」
りこが尋ねると、その友達は少し照れたように、でもハッキリと
「岩泉くん!」
と言った。
「へぇ・・・一ちゃんかぁ」
「うん、男らしくて、かっこいいからね!#NAME#ちゃん、幼馴染みなんだよね?羨ましいなぁ〜」
確かに彼は男気溢れる人だと思うし、意外にも優しい。
人気のある人なんだと思う。
「私の他の友達は、みーんな及川くん推しだけどね!」
「え、そうなの・・・?」
僅かに目を見開く。
友達は頷き、及川くんの人気は凄いよ〜と話し出す。
「中学の頃からモテてたって言うし、バレンタインとか、誕生日とかはプレゼントの紙袋何個も持ち帰ってるよ!」
「そ、そうなんだ・・・」
確かに、彼のファンも多そうだ。
以前りこも彼に好意を抱いている女子生徒達から呼び出された事もあるし、本当にモテるんだろう。
「・・・・・・・・・」
「今年はいくつ紙袋持って帰るのかな〜」
そう言った他愛ない話をしながら、教室でホームルームまでの時間を待っていると、廊下から女子生徒達の声がした。
「えっ、マジ、及川くんに断られたの?」
「うーん、ごめんね、貰えないんだって言われてすっごいショック〜」
「何か靴箱も開かないようになってたよ。ノブにぶら下がった袋にみんな入れてるみたいだけど、どうしたんだろうね」
りこは及川と言うワードに反応して、廊下の方を見る。
「私も登校してきた時に渡そうとしたんだけど、同じこと言われちゃったよ!」
「うそ〜、え、何で〜」
(あれ・・・及川くん、チョコ受け取ってないの・・・?)
先程聞いた話と食い違っていて、りこは胸がざわつく。
「わっかんない、理由聞いたら、貰いたい人がいるんだ、だって〜、振られちゃった〜」
(貰いたい人・・・・・・)
それは一体、誰なんだろうか・・・ーーー