第8章 ep8 勉強
"そんなっ、俺たちまだ早すぎるよ!俺は全然いいけどね!"
"何言ってんだよ、今度の期末テストに備えて俺ん家で勉強教えてやるっつったの、お前だろ。りこも苦手教科あるから、一緒にやりてーんだとよ"
ーーー・・・
一緒に勉強する、そう言ったけど、まさかこの子が来るなんて・・・
自室に小さな机を組み立てて、その上に教材とノートを広げ、黙々と問題に取り組むりこを及川はじっと見つめる。
岩泉は1度自宅に戻り、それからこちらの家に来るらしく、今は及川とりこの2人きりだった。
両親は仕事に出ているため、本当に2人きり。
部屋には布団も敷きっぱなしだったのが目に入る。
(あー、やばいな・・・)
意識しなくていいのに、意識せずには居られない。
制服のまま、スカートからちらりと見える白い脚や、
横の毛を耳にかける様子ですら、色気を含んでいる。
及川は自身が何か起こすのではないかと言う衝動を、必死に抑える。
(手出したら嫌われる手出したら嫌われる手出したら嫌われる・・・)
「及川くん?」
「何!?何か漏れてた!?」
突然視線をあげるりこに、及川は我に返る。
心の声が漏れていたかとドキリとするが、りこは、よくわからない、と言った表情を浮かべていた。
「この問題なんだけど・・・分かんなくて・・・」
綺麗な指で指す問題を、及川はあぁ、と理解し説明する。
りこの魅力は容姿だけではない。
美麗な容姿とは裏腹に意外と勉強が苦手と言うギャップがある。
先程から、及川が教える事が多々あり、その時は理解するが、いざ自分で解くとなるとどの方程式を使えばいいのか分からなくなるらしい。
「ごめんね?何回も同じような問題でつまづいてて・・・」
目を伏せるりこ。そんな、彼女に、及川は微笑んで見せた。
「全然。数学は数をこなさないと覚えないからね。それに、岩ちゃんだって全然・・・」
「俺が何か言ったか?」
ガラッと襖が空いて入ってくる幼馴染み。
「げ、岩ちゃん」
「げってなんだ。ウチん家からのプリンやんねーぞ」
「それは酷い!下さい!」
ーーー・・・