第8章 ep8 勉強
突然だった出来事・・・
岩泉とりことお昼を共にすることは日常となっていった。
他愛のない話をして笑い合い、バレーボールの雑誌を3人で見て熱く語ったり、一時間も無いその時間、その空間をめいっぱい楽しんだ。
りこも少しずつだが、笑顔が増え、溝も埋まってきたように思う。
岩泉が席を離れても、微妙な空気が漂う事は無い。
ただ及川は、決してりこの過去を聞こうとはしなかった。
今のこの関係を崩したくないし、バレーは今でも好きな様子なので、深く掘り下げないようにした。
だが、
「ねーぇ。りこ?」
頬杖を付きながら、及川は食後のゼリーを食べるりこに話しかけた。
丁度、ゼリーを口に入れる所でりこは及川を向き、なに?と首をかしげた。
(かわい・・・・・・)
こういうちょっとした仕草が、及川の心をざわつかせていることを、りこは知らないんだろう。
「岩ちゃんのことは昔みたいに、一ちゃんって呼ぶけど、なーんで俺のことは及川くんのままなのかな〜」
昔みたいに、徹くんって呼んでほしいのが及川の願いだった。
「おめーそんな事気にしてんのかよ、心狭いやつ」
「自分だけ名前呼びされてるからって調子乗るのは良くないよ岩ちゃ・・・っいて!」
「じゃあ俺が呼んでやろうか、"徹くん"?」
「それはそれで何か寒気が・・・」
2人の軽快な会話を聞いているりこは吹き出して笑う。
3人でお昼を食べ始めて、1週間ほど経ったがりこは徐々に笑顔を見せてくれて、今ではよく笑うようになった。
りこは笑顔が似合う、と心底思う。
彼女が笑うと、その空間が華やぐ様だった。
「あ、ねぇ及川くん、今日、練習無いんだよね?」
「え、うん、そうだけど・・・」
「今日、及川くん家、行ってもいい?」
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
「えええぇぇぇぇっ!?」