第7章 ep7 嫉妬
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移動した、裏庭に通じる通路の片隅でりこの話を聞き終えると、岩泉は隣で全てを話した彼女の頭をポンポンと撫でた。
「話してくれて、ありがとな」
「ううん、こちらこそ。・・・ごめんね、避けていたりして。嫌われるのが、怖かったの・・・」
「嫌わねぇよ。俺も・・・それに・・・」
岩泉は裏庭の方に目線を移した。
まだ蕾の花が目に留まり、春が来ていつか花開くように、りこの心も晴れる時が来ればいい・・・
「及川も、絶対にそんな風には思わないぞ」
多分自分よりも、1番りこの心に触れたいと思っているだろうあいつは・・・
「そうかな・・・・・・だけど、まだ、話すのには心の準備が出来てないや・・・」
申し訳無さそうに視線を落とすりこ。
その長い睫毛が縁取る瞳は本当に綺麗で、岩泉も少しドキリとしてしまう。
「焦る事はねぇよ。いつか、で・・・。俺も、及川もお前の味方だ。あいつは、見かけに寄らず、意外と芯は通ってるやつだ」
岩泉の言葉に、りこは顔を上げ、頷き微笑んだ。
「うん・・・知ってる。凄く優しい事も、バレーに真っ直ぐな事も。だって・・・」
「片想いの相手、だったもんな、お前の」
「・・・っ・・・・・・よく覚えてたね、そんなことっ」
頬をほんのり赤らめるりこ。
その様子に岩泉はにっと笑う。
いつも隣同士で練習していた。休憩の合間は、コーチの目を盗んで隣のコートに彼の姿を探していたものだ・・・
「よくお前に、あいつの事聞かれたな。好きな科目とか、食べ物とか」
「だっ、だってそんなの聞けるの、一ちゃんくらいしかいなかったんだもんっ」
幼き頃の思い出を話す2人には、以前のようなギスギスした雰囲気は無かった。
穏やかな空気の中、岩泉は真っ直ぐにりこを見つめる。
「まぁ、あいつは良くも悪くも、昔のまんまだ。へらへらしてっけど、ちゃんと考えてる。お前が抱え込んだその事も、あいつは絶対受け止めるから、大丈夫だ」
(お前ら・・・お互い意識しすぎだからな・・・)
「うん、ありがとう、一ちゃん」
その日、岩泉は五年ぶりにりこの笑顔を見たーーー・・・