第7章 ep7 嫉妬
「何の話か知らねぇけど」
つかつかと岩泉は彼女たちの集団の中に入ってくる。
そして、岩泉も及川と同じ様にりこを庇うように前に立った。
「こいつは、俺と及川の幼馴染みだ。文句なら俺が聞くぞ」
「え!?」
女子生徒たちは目を丸くした。
勿論、りこも。
まぁ、昔から知っているし仲もよかったけれど、そんな風に呼んでくれるのは、少し、嬉しいと言う感情が湧き上がる。
「な?りこ」
岩泉が振り返りりこを見る。
「う、うん」
その反応に頷くと、岩泉は前に向き直る。
「で、何の話をしてたんだ?」
すると女子生徒たちは顔を見合わせ、無言で去っていく。
岩泉は追いかけようとせず、パタパタと足音が遠のいていくのを聞いていた。
2人だけの空間になると、岩泉は口を開いた。
「なぁ、りこ?」
「な、なに・・・?」
岩泉は真っ直ぐにりこを見つめる。
「俺はお前の小さい頃しか知らねぇ。お前は中学も、高校も県外の強い所にいってたからな。でもな、そこで何があったか、どんな嫌なことや悲しい事があったか、俺には分かんねぇ。」
笑えなくなるくらい、悲しい事。
及川から聞いたが、バレーをやらないと言うくらい悲しい事があったんだと思う。
「・・・・・・・・・」
「無理にとは言わない。だけど、少しでも、俺に話せることがあったら話してほしい。お前がそんな顔してるの、率直に嫌だ。
力になるとか、そんな無責任な事は言えねぇけど・・・」
すぅっと息を吸うと、
「味方でいることはできっからな」
岩泉はそう言った。
りこは何か熱いものが胸の中で渦巻くのを感じる。
話すことへの迷いはあるが、それでも自分を受け入れようとしてくれている人が目の前にいることへの安心感や喜びが、それを上回ろうとしていた。
それを感じたりこは、自然と口を開いていた。
「一ちゃん、あのね・・・呆れられるかも知れないんだけどね・・・」
昔のように、
あの時と同じ呼び名で、りこは岩泉を呼び、少しずつ、自身のことを話し出したーーー・・・