第7章 ep7 嫉妬
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1番面倒臭い事が起こったと、岩泉は思った。
部室のロッカーで練習後の着替えをしていると、視界の端には机に顔を伏せて負のオーラを漂わすチームの主将の姿がある。
幸い、最後まで残って自主練をしていたのは自分たち2人だけで、それをわかっていてだろうが、及川はこうして素の姿でいるのだと思う。
(他の連中がいる前じゃ、妙にカッコつけてっからな・・・)
どんなに他では取り繕うと、岩泉の目だけは誤魔化せない。
練習が始まる前から、様子がおかしいのは分かっていたが、本人が言いたがらないので聞かなかった。
で、今やっと感情を爆発させたのか鎮火したのか、岩泉は及川に近づき、着替えのTシャツを頭に被せた。
「そろそろちゃんと着替えろ、風邪ひいて次の試合出れなくなったじゃ、示しつかねーだろうが」
「県大会、三月だし・・・いてっ」
「つべこべ言わずさっさと着替えろ。話はそれから聞いてやる」
いつもの手刀を頭に軽くして、及川に着替えを促す。
のそのそと着替えを始める及川。
(ほんと、無口が似合わねぇ奴だな)
シャツのボタンを留める及川を、頬杖を付きながら見つめる岩泉。
上を羽織った及川は、ばっと岩泉を向く。そして岩泉に泣きつき
「岩ちゃーん、俺、りこに嫌われちゃったー!!」
と言った。
(お前はの〇太君かよ!)
ツッコミを入れそうになるが、岩泉は堪え、話を聞いてやることにしたーーー・・・
及川に、冷たい言葉を放ってしまった日の翌日、りこは手洗い場で手を洗っていた。
(今日は1度も話しかけてこない、当たり前か・・・)
りこが、考えていたのは勿論及川の事で、昨日の出来事を思い出す。
(ほんと、最低。私・・・)
親切にしてくれたのに、彼に酷いことを言って突き放してしまった。
いつまでも取れないもやもやを抱いて、りこは深いため息をついた。
すると、
「ちょっといい?」
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