第6章 ep6 拒絶
「りこ・・・?」
彼女がぼうっと自分を見上げるので、首をかしげて彼女の瞳を覗き込む。
「あいつらに、何か他にされたりした・・・?」
先程、男子生徒に向けていた冷ややかな態度は一変して今はただりこの体を案じる及川。
無意識に伸びた長い指が、りこの頬に触れかけた時、
ハッとしてりこは及川の手を払い除けてしまった。
パシッと乾いた音が静かな空間に響く。
りこは我に返り及川を見上げると、彼も何が起こったかわからない様子で目を丸くしている。
りこは叩いてしまった自身の手を戒めるように包み、及川から逃れるように目をそらす。
「助けてくれてありがとう。でも、もうこれ以上、近づかないでほしいの・・・」
「え・・・」
及川は言われた意味を理解できず、りこに一歩近づいた。
「俺、りこに何かした?」
「・・・・・・・・・」
りこは何も答えず、逃げるように及川に背を向けて駆けて行った。
及川が最後に見たのは、りこの苦しそうな横顔だった・・・