第1章 ep1 追憶
高校二年の一月。
「いーわちゃんっ、あけおめことよろ〜っ!」
年明けて初めての校舎で、及川徹は慣れ親しんだ幼なじみの背中に飛びつく。
飛びつかれた彼の幼なじみ、岩泉一は気だるそうに眉間に皺を寄せて振り返る。
「んだよ、くそ川。年明けの練習でもう会ってんだろ」
「まぁそうなんだけどね?今年学校で会う岩ちゃんは今日が初めてだからさっ」
そう言って肩を叩く及川に、心底めんどくさいと言うように岩泉はため息をつく。
「お前って年明けからめんどくさいのな」
「なんでそう言う事言うのさ!」
高校二年の一月。一つ年が明けためでたい時期ではあるが、及川と岩泉の関係にさほど変わりは無かった。
「そう言えば及川、今年の春高見てたか?」
昇降口で上靴に履き替えながら岩泉は言った。
「勿論。牛若のやつ、春高でもライトからばんばんスパイク決めちゃって、ホント腹立ったよね」
その向かいの下駄箱から上靴を取りながら及川はぶちぶちと答える。
「今年は、俺たちがあそこへ行くんだからね」
「あぁ、まずは県民大会、絶対タイトル獲るぞ」
「もっちろん!岩ちゃん頼りにしてるからね〜」
2人は言わずと知れたバレーの名門、青葉城西高校の主将と副主将。
共に全国へ行くために同じコートで、小学校から今まで練習してきていた。
「今年が本当にラストチャンスだ」