第6章 ep6 拒絶
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りこは非常に面倒臭い状況に陥っていると思った。
五時間目の授業が終わり、次の教室へ移動していた際に、教科書を忘れたことに気づき、最近仲良くなった友達に一言言付けて来た道を引き返していたところ、目の前に体格のいい男子生徒2人が道を阻んできた。
そしてあろう事か、初対面のりこに連絡先を教えろと強要してきたのだ。
(どうしよう・・・)
先程から通してと言っても、連絡先を教えてくれるまで通さない、この一点張り。
困った、非常に困った。
大人しく連絡先を教えればいいのかもしれないが、それは確実に嫌だった。
(ここでタイミング良く先生とか来てくれないかなぁ・・・)
藁にも縋る思いだったが、その気配は無く、
男子生徒2人のうち1人が、謎に手を伸ばしてくる。
「や、めて下さい、何ですかっ!」
「だから、携帯。番号教えてくれるだけでいいんだって」
ブレザーのポケットから覗くスマートフォンを取りにかかっていると悟り、身をよじって拒否する。
(誰か・・・っ)
その時・・・
「嫌がってる女の子にちょっかいかけてるの、惨めだって思いませんか?先輩」
「・・・え?」
聞き覚えのある声に、りこは階段の上を見上げた。
「あ・・・・・・」
「げ、及川・・・」
りこに掴みかかろうとして男子生徒は手を止め、バツが悪そうに及川を見た。
「スポーツ推薦で次の大学が決まってるラグビーの先輩方の趣味は下級生のナンパなんですね〜、知らなかったなぁ」
ゆっくりと及川は階段を降りてくる。
一つ一つ階段を降りてくる様は、まるでドラマのワンシーンのように完成されており、及川の存在の主張を強めた。
そして、及川はここ数日で見たどの顔でもない、感情を無にしたような表情を浮かべていた。
りこですら、固まってしまうほどに。
「頑張ってる後輩達や顧問の先生が知ったら、心底がっかりしちゃいますね」
「いや、違うって及川・・・これは」
「でも・・・」
冗談、とでも男子生徒は続けようとしたのか、
及川は気にもとめずりこを庇うように立った・・・
そして