第5章 ep5 探求
(いつもアプローチ受けてる側の及川がぐいぐい行ってる姿見んの、新鮮すぎる・・・)
決して馬鹿にしている訳ではなく、ただ単に関心が湧く。
「そりゃあ、元々可愛かったけど、今は綺麗って感じだし、脚も長いし見とれちゃってるかもしんないかもだけど・・・・・・」
少し頬の赤い及川は、ぼんやりと窓の外を見やる。
「でも今は、何かが抜け落ちてるって感じがするんだよね・・・」
偽りの笑みを浮かべて、誰とも深く関わりたくないような、そんな彼女。
「だから俺は、昔みたいに笑ってほしいって思うんだよ・・・」
"徹くんっ!"
(昔みたいに名を呼んで、俺を映してほしい・・・)
「どれだけ避けられようとも、りこの事を知りたいという気持ちは変わらない」
ぐっと、拳に力を込めた及川を見やり、
(それが、惚れてるんじゃねぇのかよ・・・)
「邪魔はしねーけど、程々にしろよ。あいつはお前に対して耐性あるから、いつもの調子でいっても絶対心開かないと思うぞー」
「くぅぅっ、岩ちゃんに言われると腹立つけど正論!」
「お前やっぱくそ川だな」
ーーー・・・
及川は、まだりこの事を何も知らない。
中学高校は、どんな所でバレーをやっていたのか、
ポジションは?
周りを取り巻く環境は?
綺麗になっていたけど、
彼氏とかいたのか?
聞きたい事は山ほどある。
(くぅぅっ、特に最後のは知りたいけど知りたくない、かも・・・っ)
ぎりぎりと、歯ぎしりでもしそうな形相で廊下を歩いていると、すぐ側の階段辺りで声が聞こえた。
ひょい、と顔を覗かせて様子を伺うと、
「あの、すみません、通れないので、どいてもらってもいいですか?」
「だからー、番号教えてくれたら、通してあげるって!!ね?」
そこには、2人の男子生徒に絡まれている、りこの姿があった。