第5章 ep5 探求
声をかけられたりこはぴくりと肩を揺らし、先程受けていた英語の教科書とノートを机の中にしまい、振り向く。
「大丈夫、また今度ね・・・」
と言い残し、足早に教室を去っていく。
「ふ〜うん。そっかぁ」
「おい、及川。俺、忠告した筈だよな?無闇に絡みに行かない方がいいんじゃねぇのって」
岩泉の言葉に、わかってる、とでも言いたそうに肩をすくめる及川。
筋の通った鼻の頭を少しかき、岩ちゃんはさ、と口を開いた。
「彼女、いた事あったっけ?」
「はぁ?」
「俺はさ、何人か女の子と付き合ってきたけど・・・」
(何人かって言ってるくらい数も覚えてねぇのかよ・・・)
岩泉は喉からでかかった言葉を飲み込み及川の話を聞いた。
「告白してきてくれたから付き合った、そんなのが多かったんだよね。あー、勿論、全員じゃないよ?彼女にしたいなって子にも、俺、タイプがあってさ、泣く泣く断ったこともあったけど・・・」
(何なんだこの、ちょいちょい訪れる憤りは・・・)
感情を表に出さないように、岩泉は弁当の蓋を開け、箸をとる。
「少しでも、あの子に・・・りこに似ている子を探してたのかもしれない。勿論、その時はりこの事なんて考えてなかったし、今の発言は彼女たちには悪い気がする、けど・・・でも、先週再会して思ったんだよね・・・」
"俺の初恋は、りこだったんだ・・・"
"りこみたいな子を・・・いや、りこを待ってたんだよ、俺は"
何故こんなにも惹かれるのは分からないが、
気づけばいつも無意識に幼い頃の彼女の面影を探していた。
及川の言葉に、岩泉は静かに息をつく。
「そうか。まぁ、お前が自分からアプローチかけんのって珍しいから、本気なんだろうなっとは思ってたけど」
「本気?」
「お前、好きなんだろ?りこのこと」
「・・・・・・・・・」
急に黙る及川の方を振り向くと、及川は目を丸くしていた。
「なっ!好きだなんて岩ちゃん!何てハレンチなの!!」
「そこまで言っといて、好きじゃなかったらお前の行動、怖すぎるだろ」
うそ!そんなに変!?
と1人で大騒ぎしている及川を無視して弁当に向き直る。