第34章 ep34 君の隣で同じ景色を見る
それから、月日は流れて、梅の花が咲き始める三月の頃・・・
ーーー・・・
同じチームで、主将として、マネージャーとして、
勝利の為に努力した日々や
ぶつかり合って泣いた日々
くだらない事で笑った日々、
全部全部、隣で同じ景色を見てきた。
それが、今日から
この学校を卒業したこの時から・・・
見る景色は、違って行く・・・
「及川ー!本当ありがとうな!」
「東京でプロでバレーやるんだって?テレビ出たら絶対応援するからな!」
「及川くん、彼女いるの分かってたけど、ほんと、いつまでも応援してるからね!」
「たまにはこっちに帰ってこいよ!待ってるからさ!」
「彼女と仲良くやれよ!」
すれ違うクラスメイトが、声をかけてくれる。
明日から、俺はここにいないし、みんなもここにいない・・・
沢山、沢山思い出の詰まったこの学校から、
今日卒業する。
本当にもうこの校舎を使って学ぶことは・・・無い。
「及川、シンプルに言う。東京行っても、頑張れ」
「お前が頑張ってるって事はテレビ付けたらわかるような所まで行けよ!絶対、全日本入りな。俺、お前の同級生だったって自慢したいから」
「おい、及川。半端な結果で帰って来んなよ。お前が満足するまで、行きたい所まで行け。ここに帰ってきたら、引退してようが何だろうが、何万本ものトス、上げさせっからな!」
この最高のチームメイトとも、もうあの体育館で、あのユニホームで、バレーをする事は無い。
寂しいと感じているのは俺だけじゃなくて・・・
「りこ・・・泣きすぎ」
「だってぇ・・・っ」
彼女は想像以上に号泣していて、手を繋いで学校を後にしている今もずっと隣で鼻水を啜っている。
「みんなみんな・・・ぐずっ、大好き。もう、ほんと、寂しいよぉ」
「はいはい、俺だって泣きたいのに、何かお前見てると涙引っ込むよ」
ぽんぽんと頭を撫でてやる。
そうしてあやしながら歩いていくと、いつも帰り道降りていた階段に差し掛かった。