第33章 ep33 信頼
それを、すっと及川の前にやる。
「これ・・・・・・」
真新しい記憶。青城のユニホームで、優勝カップ、優勝旗、賞状をそれぞれ持った、及川と、りこと、その誇らしい仲間達との集合写真。
「こないだの、東北大会の・・・?」
勝利で飾った東北大会のものだった。
これがどうかしたの、と言いたげにりこを見上げると、彼女の瞳は既に、潤んでいた。
「りこ・・・?」
「た、でしょ・・・?」
「え・・・・・・?」
「私が側にいなくても、ちゃんと皆で勝てたでしょ・・・・・・?」
だから、私がいなくても大丈夫。
例え遠くに行ってしまっても、徹くんなら、夢を叶えられる
それを気づかせるために、ずっと避けていたのだと、
やっと、
やっと、理解した。
「りこ・・・っ・・・!」
気づけばりこを引き寄せ、その胸に細い体を閉じ込めていた。
「りこ・・・りこっ・・・」
きつく、きつく抱きしめた。
及川の腕の中で、りこは肩を震わせて泣いた。
「沢山、避けてごめんね・・・っ・・・でも、本当に気づいて、ほし、くて・・・・・・」
一番辛かったのは彼女だろう。
及川が、この行動の意味を気づく余地もなく、ただ時間だけが流れて・・・
大切な人だから、絶対にわかって欲しくて。
及川も孤独だった分、りこもひとりの時間を過ごしていたのだ。
もしかしたら、及川が、
考えるのを諦めて、また、自分は捨てられてしまうのではないかと言う不安さえあったが、及川を、
信じて、信じて、信じ続けた・・・
「私・・・いなくても、徹くんはみんなを引っ張って、優勝してくれた。本当に凄いんだよ、徹くんは、だから・・・・・・」
涙でぐしゃぐしゃになった顔すらも愛おしく、美しく、
りこは微笑んだ。
「東京でも、きっとちゃんとできる。私が信じてる」
及川が大好きなりこの笑顔。
こんなに、こんなに泣かせてしまったけれど・・・
それでも笑ってくれる。