第33章 ep33 信頼
少し、声が掠れる。
話していると、自分がいかに、小さく情けない心だったのかが改めてわかる。
離れていても絶対に心は揺らがないと信じていた相手が、
一緒にいないと嫌だなんて・・・・・・
自分を信じてくれてないのと一緒だ。
「なのに、俺は・・・お前の事、信じてなかった。こんなにチームの事も、俺のことも大切にしてくれてたのに・・・
離れてたって気持ちは変わる事がないって、
何で信じなかったんだろう・・・。
こないだの東北大会の決勝、マッチポイントの時の俺のサーブ。りこはあの時も、ちゃんと俺を信じてくれてた。
りこより全然子供で、自分の言動一つで、お前のことを傷つけた俺が、それに気づくのを。俺が心から前に進むのを・・・
りこ、こんなに気づくのが遅くなって、本当にごめん」
一気に話して、りこに頭を下げる。
今までの謝罪が、とてもとても薄っぺらい内容だったと自覚する。
りこは静かに、頭を下げる及川を見下ろした。
そして椅子から立ち上がり、及川の前まで行くと、ぎゅっと力を込めて握っていた手を、そっと開いて、その手で及川を抱きしめた。
「うん・・・」
及川は柔らかな温もりに包まれる。
「もういいよ。気づいてくれたなら・・・・・・」
その一言に。目頭が熱くなるのをじっと堪える。
約一ヶ月振りに感じる彼女の温もり、優しい声・・・
「りこ・・・・・・気づくのが遅すぎて、本当にごめん。それから、俺が・・・気づいてくれるって、信じて待っててくれて、本当にありがとう」
及川も抱きしめ返す。
愛おしいその体を。
丁度胸の当たりに頭が来る位置で、りこの心臓の音が聞こえるのが心地よかった。
「長い間、避けたりしてごめん。本当に気づいて欲しかったから、わかってほしかったから・・・・・・」
「うん」
だけどね、とりこは及川の目をじっと見つめた。
「私が徹くんを避けて、気づいて欲しい事は、もう一つあったの」
「もう一つ・・・?」
首を傾げている及川の腕から一度離れ、りこは勉強机の隅にあった写真立てを手に取り戻る。