第31章 ep31 離別
だから、実業団に行く、そう決めた。
監督にも、話をしに行った。
正直に言えば、りこと一緒にいたかったと思うけれど、夢を叶える為には仕方ないと言い聞かせている。
2人きりになったミーティング会場で俯いたりこはぽつりと呟いた。
「及川くんのサーブはチームの流れを掴む。明日もがんばろ」
りこからは、許しの言葉は出なかった。
テキパキとパソコンを片付けるりこ。
及川はそれを風景のように見つめていたが、やがてこれ以上いても、何も話はしてくれないのを悟り、黙ってそこを後にした。
及川の気配が無くなると、りこはきゅっと、唇を噛み締めた・・・
ーーー・・・
2日目、青城は決勝戦まで勝ち進んだ。
夏の暑い体育館。選手たちは闘志と勝利に貪欲な心と集中力だけで動いていると思った。
24-23
マッチポイント。そこで回ってくる、及川のサーブ。
及川はちらりとベンチを、りこを見た。
強い瞳で彼女は真っ直ぐに及川を見て、頷いた。
行ける・・・
及川は心がしんと静かになるのを感じた。
二歩下がる。
そしてそこから、サーブトスを。
思いっきり踏み込んでいくーー・・・
見える、見える、見える、感じる
ここに打てば・・・いける!
及川は真っ直ぐにボールを叩き込んだ。
そしてそのボールはネットを超え、数多の選手を過ぎ、そして、
エンドラインギリギリ手前に、突き刺さるように・・・落ちたーーー
「っしゃあぁぁぁぁ!!!」
今大会、歴代優勝校の名に、青葉城西高校の名前が刻まれた瞬間だったーーー