第31章 ep31 離別
東北大会を優勝で飾り、一週間が経とうとしている。
学校は夏休みに入り、毎日体育館で一日練習か、練習試合三昧。
チームもインターハイ予選の時よりも随分と大きくまとまってきている気がする・・・
しかし、
及川とりこの距離は、縮まらないままだったーーー・・・
「岩ちゃん、俺マジでもうだめかも知れない」
岩泉が及川を見ると、体育館の床に突っ伏して倒れている。
「まだ8月にも入ってねぇんだぞ、この時期にバテてどうする!」
「夏バテじゃないっつの!」
ガバッと顔を上げる及川。
「りことの事だよ・・・」
東北大会を優勝で飾ろうが、彼女は変わらなかった。
しかも、今はもう一週間も、練習に来ていない。
「試験が日曜日にあるんだから仕方ねぇだろ」
来ていないと言っても、学校にはいる。
次の日曜日にまた大阪へ赴き、面接と筆記試験があるらしい。
普通の大学受験にしては早すぎるが、りこの恩師がその大学のバレーの監督と話をつけてくれて、特別に試験を早めてくれたらしい。
と言うか、合格はほぼほぼ決定しているが、忙しくなる前に形だけの試験を済ませておく、という話だ。
今は学校に篭りきりの彼女だが、朝早くにドリンクやタオルをセッティングしてくれたり、昼休みにはそれを作り足したり、忙しいながらもチームの様子は見に来てくれている。
だが、及川に対しては相変わらずで、
正直、もうこの生活に慣れて来てしまっている。
だからこそ、これが当たり前になってしまうのが、心底嫌だ。
りこに触れたい・・・
りこの笑顔が見たい・・・
自分はまた、彼女を遠ざけてしまったのだろうか・・・
(いま、だな・・・・・・)
岩泉は幼馴染の萎びた姿を見て、一度ゆっくりと息を吐いた。
それから
「"信じてる"」
「え・・・・・・?」
「あいつからの伝言だ。死ぬ気で考えてみたら、分かるはずだって」
岩泉を通じて聞いた、りこからのメッセージ。
"信じてる"
何をだ?
わかれば、彼女に追いつけるのか・・・