第31章 ep31 離別
「わかった。今回は本当に俺が悪いと思うよ・・・・・・明日、りこに謝ってくる。ちゃんと理由も言って」
「おう。東北大会も近いし、とっとと仲直りしろよな」
今日はもうりこは先に帰ったから、明日、言いに行く。
ーーー・・・
その日の練習終わり、及川は再び、りこが体育館から出てくるのを待っていた。
「・・・待たないでって、言ったつもりだけど・・・」
相変わらず、すっと及川の横を過ぎようとしたりこの腕を掴んで、立ち止まらせる。
「聞いて。こないだの、進路の話・・・俺が悪かった。俺、りこを理由にして上の舞台でやるの諦めようとしてた。そんなの、許してくれる訳ないよね。俺、ちゃんと自分がやりたい舞台でやるから・・・」
りこと離れるのはめちゃくちゃ寂しいけど・・・・・・・・・
しかし、りこは俯いたまま。
「りこ・・・?」
彼女の表情が、心が読めない。
すると小さな唇は言葉を紡いだ。
「じゃあ、その事、監督に明日にでも伝えた方がいい。待ってるから」
そう言って、また、それじゃ、と脇をすり抜けていく。
・・・・・・なんで?
なんでりこは笑ってくれないんだ?
何をまだ、怒っているんだろう。
思っている事は、全て言ったつもりなのに・・・
てっきり仲直り出来ると思ったのに・・・
彼女の心が、全くわからなかった・・・
ーーー・・・
七月中旬、東北大会1日目。
この大会は、東北の各県上位四チームが参加する大会で、その中で東北の一位を決める大会である。
今回、宮城県一位の白鳥沢学園は海外からの招待試合の為に辞退している。
「ウシワカ倒せないのは残念だけど、その代わり、絶対勝ち進んでやる」
及川たち3年生にとっては最後の東北大会。
心の準備は万端だった。
まだ、気がかりな事は残っているが。
「おい。及川・・・遂に東北大会まで仲直りしてねーのかよ」
「うーん、それがさ、俺ももう笑えないんだよね。こんなに長引くなんて・・・」