第31章 ep31 離別
りこなんか知らね、もう、勝手にしなよ!と勢いに任せた感情が渦巻いて暫く、りこと話さなくなって5日経った。
5日も経てば、自分の気持ちへの見直しができるくらいまでには落ち着いていた。
我ながら、子供っぽい事を言ってしまったと反省できている。
そして毎日、彼女の事が気になって仕方ない。
学校はテスト期間へ突入している。
テスト勉強はどうしているのだろうか。それとなくりこのクラスの男子に聞いたところ、花巻に勉強は教えて貰っているみたいだ。
(まぁマッキーなら安心か・・・)
りこは、周りに勘づかれないように及川を避けるのが上手い。部活では及川とは業務的な会話はこの5日間の間もやっている。それ以外は自分の仕事や、後輩の自主練の付き添いをしている。だから不自然ではないのだ。
今のところ、誰も気づいていない・・・・・・
「おい、りことなんかあったろ」
あぁ、こいつを除いて。
「ありました、岩ちゃんさん」
ーーー・・・
「ふうん、ま、当然だろーな。お前が悪い」
「分かってっけどさ、そんなに怒ることかな!?彼女なら少なからず嬉しくない?自分と離れたくないなんて言ってくれるの!俺なら嬉しいけど」
自主練終わり、カゴいっぱいのサーブを打ち終え、それのボール拾いをしながら及川は岩泉に感情をぶつける。
自分たち、2人しかいない体育館での会話はよく響く。
「それはそうだけど、りこは今でもアスリート顔負けのストイックな根性してるだろ。自分の事が原因で夢を諦めて欲しくねぇんだろうよ」
「・・・・・・・・・・・・」
「ましてや自分も前に、当時の彼氏にハマりすぎてバレー疎かにしたって苦い顔して話してたし、お前にそういうことして欲しくねぇんだろうよ」
岩泉の言葉は、悔しいが納得できた。
りこは、高い舞台でプレーできるなら、そこに行ってほしいと思っている。
及川自身が、本当はそこへ行きたいのも。
でも自分が足枷になって目指す場所を邪魔してしまっているなら、それは怒るだろう・・・。