第30章 ep30 進路
正直。りこの中で及川はバレー意識が群を抜いて高いから、実業団に意思を固めているのかと思っていたが、予想外の進路を言われてびっくりした。
「バレーの強い所でやるのは夢だよ。だけどさ・・・」
及川はりこを抱き寄せる。
「俺、お前と離れるのヤなんだよね」
5年もの間離れていた存在が、やっとこんなに近くで、自分のものでいてくれる。
また、離れた所に行くなんて・・・
俺・・・・・・
しかし、りこは黙ったまま。
不思議に思って及川は彼女の顔を覗き込む。
「ふざけないで」
「は?」
小さく低い声が聞こえたと思ったら、胸元に強い衝撃。
押し返されたのだと感じた頃には、りこは目を釣り上げて及川を睨んでいる。
「なんだか、拍子抜けしちゃう・・・」
りこは踵を返してスタスタと帰路を歩いていく。
「ちょ、りこっ!?」
「ついてこないで」
こちらを振り向きもせずに言い放つ冷たい一言。
多分、相当怒ってる。
「りこ・・・?」
その剣幕に、及川は完全に萎縮する。
「ごめん、暫く、話したくない。・・・朝も1人で行くから、それじゃ」
淡々と告げ、淡々と歩いていく彼女。
ぽつんと1人取り残された及川。
な、なんで・・・
なんでだーー!!