第30章 ep30 進路
「待って、大阪って、もう決めたの?」
「決定ではないけどね、そこの大学のバレーの先生、前から知ってて、恩師の先生も、私が本気なら口聞いてくれるっていうから」
ふーんそうなんだで、流せるわけなかった。
待って、待って、待ってよ
「てことは、遠距離・・・になるってこと?」
「そうなってくね、行く行くは・・・」
なんでそんなあっさりしてんのぉーーーーー!!!!!
及川は叫びだしそうだった。
ーーー・・・
それから暫く、大学の監督が練習を見に来て、練習が終わると及川は教官室へ呼び出される事が多くなった。
また、是非一度練習に来て欲しいと言われて練習に参加させて貰うこともあったりで、結構目まぐるしかった。
一方りこはと言うと、一度決めたら行動は速い。他の宮城の大学のことも調べたが、やはり大阪の大学への意思を固めたらしい。
先日願書を送ったと行っていたのが梅雨頃。
七月に入る頃になっても、
及川はまだ、進路を決めかねていた・・・・・・
ーーー・・・
「りこ」
とある練習後、監督はボールを拭いていたりこに声をかけた。
「はい、どうしましたか?」
「少し相談事を、頼まれてくれるか?及川の事だ・・・・・・」
ーーー・・・
"進路について、まだ悩んでいるみたいだがな、企業側の方にも。八月までには返事を出したいと思っているんだが・・・"
"まだ、色々と悩んでるみたいですね"
"あぁ、君からも少し催促してもらっていいか?"
わかりました、と了承してからりこはいつもと同じように及川と最寄り駅を降りていった。
季節はもう夏。
そろそろセミの鳴き出す頃になる。
(来年は・・・大阪で夏を過ごすんだろうな・・・)
と、先のことを考える。
ふと、先程繋いだばかりの手に力を込めて、ねぇ、と口を開いた。
「及か・・・徹くん?」
すっかり上に登る満月を背に、及川はりこを見下ろす。
今日もカッコイイなんて照れくさいから言わない・・・