第30章 ep30 進路
「こないだのインターハイ予選には、東京の〇〇の監督も来ていて、挨拶しに来てくれた」
(実業団か・・・)
高校を卒業してもバレーを続ける選手のほとんどの進路は大学へ進学するが、そのまま実業団へ入団するケースもある。
全国で名の知られた優秀な選手、長身の選手、とにかく、入りたいです、どうぞ!みたいなノリで入れるものではない。
憧れの、プロの世界だ。
及川も憧れる世界・・・
だが、
「すみません、まだ、返事をするのは待って貰えますか?」
「わかった。だが大学の方はまだ猶予はあるが、実業団はこの選手がだめなら、次へ、新たに選手を探さなければ次のシーズンに影響する。社会的な事情もある」
「はい、なるべく早く返事ができるようにします」
そう言って、及川は教官室を後にしたーーー・・・
練習後、家に帰り、布団に寝そべりながらバレーボールを手に取り及川は考えた。
誰もが悩むであろう、進路。
自分のこれからを決める大切な決断。
自分から見に行く奴もいるけれど、及川の場合、有難いことに選択肢がいくらか用意してもらえている。
その中で及川が揺れるのは、やはり実業団か、大学か・・・
プロになるという事は、憧れる。
自分はどこまでいけるか、レベルの高い選手と頂点を目指してやりたいとも思う。
だが・・・
"徹くん!"
及川が悩む理由の片隅、いや、むしろ中心よりちょっとずれるくらいの所にりこの存在があった。
本当は中心にいたがやはりそこはいけないと思いずらした。
(りこは・・・どうするんだろう。こないだ話した時は、大学に進学したいって行ってたし、やっぱり大学なのかな・・・)
実業団に行くと決めれば、りことは離れ離れになる。
遠距離恋愛、その事が脳裏をよぎると、
自分の気持ちは変わらないと言えるが、今、こんなに近くにいてくれる彼女と離れるのは、正直に言うと嫌だ。
実際今だって1日離れているだけでこんなに心が寂しいのに。