第30章 ep30 進路
りこは恩師の元へ行くため、1日練習を休んだ。
バレーと恋愛は別!と割り切っていた及川だったが、りこがマネージャーとして入部してから、今日まで彼女がいない練習は無かった。
業務で練習を抜けたり、途中から来ることはあったのに、いざ今日はいません、と言われるとやっぱりあぁ、いないんだと心がかくんと落ちるのは否めない。
(不思議だな・・・今まで付き合ってきた子に、こんな事思わなかったのに)
きっとそれは彼女が進んでチームに関わってくれているから、彼女を含めてチームだからだろうと、及川は気づいた。
あぁ、早く会いたいな。
これを言えば岩泉にどつかれると思うけれど、多分とっくに気づいてる。
「あいつも何か変えようとしてるんだからな、俺らが立ち止まってる暇ねぇよ」
なんて言われる始末。
「そうだよね・・・」
わかっている。負けた時から、次は始まっているから進まなければならない。
しかし、この時期、
毎年行われるものがあり、りこ以外にも練習を抜けなければ行けないことがある・・・・・・
「及川、教官室で監督が呼んでる」
(来た・・・かな・・・・・・)
バレーシューズの音を鳴らして、及川は教官室へと向かった。
ーーー・・・
「とりあえず、県内ではこの二つから。後は、東京、茨城、大阪の方も電話が入ってる」
〇〇大学 〇〇 〇〇様
と走り書きのメモがいくつもテーブルの上に置かれている。
毎回、電話で・・・
"そちらの、及川選手についてなんですが・・・"
と、切り出される話。
いわゆる、是非、進路はうちに、というスカウトだ。
及川の実力は県外にも轟く。
今がスカウトの時期であり、早ければ夏休み前にはもう決まっているケースもある。
歴代の先輩たちもこの時期だった。
バレーを続ける先輩方はこないだのゴールデンウィーク合宿でお世話になったあの大学へもよく進学している。勿論そこからも話は来ている。
バレーを続けない、と言う選択肢はハナからなかった。
まだ、バレーをしていない自分は想像できないから。