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Story〜君の隣で同じ景色を見る〜

第28章 ep28 実感






持ち技のジャンプサーブで何本、サービスエースをとっているか。


男子バレーは、女子とはパワーやスピードが違う。



あれをとれる選手なんて・・・・・・





相手のタイムアウトで、選手がベンチに帰ってくる。


りこはひとりひとりに手早くタオルとボトルを渡していると、りこっと、自分を手招く及川がいた。




「相手攻撃2枚だし、ちょっとさ、金田一を相手のウィングスパイカーよりにブロック寄らせておこうと思うんだけど、どう思う?」


突然振られた相談に、りこは一瞬止まったが、ええと、と考え出す。


「今の及川くんのサーブをAキャッチで返すことは難しいから速攻は無いとしても、ダイレクトで返ってくる事もあるから、金田一は真ん中のポジションからスタートした方がいいと思う」


「そっか、だよね、ん、分かった」



そんな会話をしているうちにタイムアウトは終わり、ぞろぞろとコートへ戻っていく。





「及川に相談されるなんて、お前ももう立派な青城バレー部だな」



監督が試合を見ながら呟く。



「え、いえ、そんな・・・」



「周りから見える、確かな情報を頼りにしているのは、信頼の証だ。誇りだと思ってもいいな」




謙遜するが、監督の言葉に、胸が熱くなる。


こんな・・・こんなコートを全て把握しているような彼に頼りにされる事がとても喜ばしい。




「・・・はいっ」







その時、りこの中で、何かが、変わろうとしていたーーー・・・









及川だけでなく、他の選手からもりこはバレーの面で相談される事が多くなってきた。


元々チームメイトの自主練にはよく付き合って、選手たちと共にあぁでもないこうでもないと言い合って答えを見つけている。



中でプレーしている時より、冷静に物事が判断できてきているという自覚はある。



それを伝え、選手が取り組み、できた時に、初めて信頼が生まれるということも、分かってきていたから、彼らが自分を頼ってくれている事が嬉しかった。



(渡くん、ちょっと前重心意識してる、よし、上がった!ナイス!)




人に教える、それを実行し結果が出た時の喜びは選手と同じくらいに嬉しいものだ。

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