第25章 ep25 繋想
「俺もって・・・どういうこと?」
りこの髪に、指を通しながら、及川は甘く尋ねる。
「だから、・・・っ」
「ん〜?」
分かっているが、りこの口から聞きたくて、言葉を催促するようにすると、
りこはぎゅっと及川の首に抱きついた。
「もうっ・・・・・・徹くんがそういうこと求めて来てくれないから、私だけなのかなって思ってたのっ」
(あぁ、やばい、にやにやが止まらない・・・)
すぐ隣で感じる彼女の吐息。
こんな事をしてくるのは初めてで、彼女の体が大いに熱くなっているのを感じる。
「そんなことないよ、俺、ずっと我慢してた。でも、りこが、気持ちの整理がつくまで・・・その時まで待とうって思ってたんだよ」
彼女の背中に、ポンポンと手を置く。
「気持ちの、整理・・・?」
体を離し、及川の胸板に手をついて、りこは及川を見つめる。
「前の彼氏のこと、もうちゃんと、過去になってる?もう振り切れて・・・俺だけを見てる・・・?」
「あ・・・・・・」
ずっと気になっていた。
沢山好きだ、愛してるだなんだかんだ、愛の言葉を囁いてそばにいたのに、妊娠が発覚した途端に去っていった男・・・。
奴を最低呼ばわりするのは簡単だが、そいつを愛していたりこの心の闇は計り知れないだろう。
だから、自分が今は恋人という立場にあっても、過去のトラウマを抱えていたら、彼女も先に進めないと思ったから、及川は今までりこを求めなかったのが本音。
「りこが俺を、信じてくれるまで、待とうと思ってた。りこが、ちゃんと、俺を見てくれるまで・・・」
「私・・・」
「でも、その分、俺の意図が分かりづらくて、不安にさせてしまってた事もあったんだね・・・」
及川の気持ちより、自分の気持ちの方が大きいとか、全然そんなことないのに・・・
「言葉でならいくらでも与えられる。でも、本当に信用できるのって、一緒に過ごす時間や、幸せと感じられる記憶だと思う」
不安になった時、一番に思い出したいのは、
大切にされてたという記憶だと思うから・・・。