第25章 ep25 繋想
2人のバレー人生がはじまったばかりの頃の思い出・・・
「満面の笑み、だよね・・・」
「うん、徹くん歯が抜けてる、可愛い」
「そんな所見なくていいから!」
よく見たら前歯の横の歯に永久歯がまだ生えてない。
それくらい小さな頃の写真なのだと改めて思った。
りこはその他に飾られている写真も、くまなく、なんとも優しい表情で見ていた。
中学の県大会、東北大会、新人戦・・・
どの写真の及川も、いつもりこの心を晴れやかにしてくれるあの笑顔を向けている。
「徹くんは、本当にバレーが好きだよね」
「それはりこもでしょ?こんなにこにこしててさ」
中学最後の試合で貰ったセッター賞が入った額を、愛おしそうに手で触れるりこに、及川は後ろからそれをひょいと取り上げた。
「あ・・・」
「ね、りこ・・・」
セッター賞の額を元の所に置き直し、ついでにそこに手をつく。
りこを囲うようにして、及川はもう片方の手で、りこの髪に触れる。
これから先のことを予感して、りこは顔を赤くして口を開く。
「と、徹くん・・・?ゼリー要らない?」
「後で食べるから」
「あの、玄関閉めてこないと・・・」
「ちゃんと閉めたよ」
「そ、そこの部屋の襖も・・・・・・」
「大丈夫、今日、誰もうちに帰ってこないから」
夜遅くには帰ってくるけどね・・・
りこの提案をことごとく却下し、徐々に顔を近づける及川。
しかし、途中でふっと顔を逸らす。
「ごめんね、りこ・・・」
「え?」
「昨日のこと。人前で、あんなこと・・・」
思い出すのは昨日の夜。
りこがいない所で彼女を思い、気持ちが盛り上がってつい言ってしまったこと。
あぁ、というような表情を浮かべるりこ。
「ううん、私こそ・・・ごめん。怒ってた訳じゃなくて・・・徹くんもそう思ってたんだって知って・・・なんだか恥ずかしくなっちゃったの」
ん?
「徹くん、も・・・?」
及川は胡座をかき、その上にりこを乗せる。ちょうど向かい合わせになるように。