第25章 ep25 繋想
一度学校に戻り、部室にバレー用具を置き、そして解散になる。
明日は念願の1日休み。
帰路につくチームメイトの表情は疲れと安堵と喜びに溢れていた。
及川とりこの家は、さほど遠くない。
りこと"一旦"別れてから及川は急いで帰宅した。
両親は今日仕事の後に、付き合いで飲み会。
猛は家族で大阪へ旅行しているため勿論いない。
となれば、今日はひとり、ひとり!
何度もどの部屋も人がいないか確認をし、ひとりだということを認識する。
シャワーを浴びながら、ふと。りこのことを思う。
(言った。言っちゃったな・・・)
あの後、りこは俯き、顔を真っ赤にして小さく頷いた。
あともう少ししたら、ここに彼女が来る。
話して、抱きしめて、キスをして・・・それ以上を考えるともう今から心臓がもたない。
なんでだろう、女の子を抱くのは初めてじゃないのに、
こんな、初めてに近い感覚・・・
(りこ・・・・・・)
この手で、彼女は、どんな姿を見せるんだろう。
早く知りたい、りこだから、知りたい・・・・・・。
ーーー・・・
それから暫くして、りこが訪れた。
手土産のゼリーを持った彼女は、普段の制服でもジャージでもない、白のワンピースを着ていた。
出来るだけ平然と、胸の鼓動がやかましく鳴るのを知られないように、りこを家の中へ招き入れる。
「小学校以来だね、徹くんの家に来るの・・・」
「そうだったね・・・変わらず古い家だよ」
そんな事ないよ、と当たり障りない会話をしながら、自室へ。
畳の香りが心を落ち着かせる。
布団が1枚敷かれた部屋は、嫌でもその次を連想させてしまう。
しかしりこが注目したのはそこではなく・・・
「あ、あれ!」
りこは足早に部屋の中に入り、机のパソコンの横に飾られた写真立てを手に取る。
「あぁそれ、市内大会のかな?」
押し入れに閉まっていた写真を、りこと再会してから写真立てに入れている。