第2章 *始まりの鐘*
「お待ちしておりました。プリンセス、ルイ様」
ダンスホールに入ると、デュレー大公が出迎えてくれた。
「お久しぶりです、デュレー大公。この度はご招待いただきありがとうございます」
以前あった時よりも穏やかで優しい笑みを浮かべるデュレー大公に、私の緊張も和らいだ。
「プリンセス、ルイ様、今日はどうぞお楽しみください」
「ありがとうございます。行こう、ユイ」
「あ…うん」
公爵としてのルイは緊張を全く見せず、凛としていて…こんな時でも見惚れてしまうほど
_______________綺麗だった
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「ユイ、大丈夫?疲れてない…?」
「うん、私は大丈夫だよ。ルイの方こそ平気?」
私達はデュレー大公と別れた後もひっきりなしに続く挨拶を終え、会場の隅で一息ついていた。
(正直もろに品定めって感じで気が気じゃなかったな…)
それでも、ルイがずっと隣にいてくれたから頑張れた。
「少し…外に行こう」
「うん、そうだね」
────ルイ様…っ…!
ルイに促され、移動しようと歩き出したのと、その声が聞こえたのはほぼ同時だった。
振り返ると、清楚な雰囲気の女性が顔を真っ赤にして立っていた。
「君は…?」
「あの…っ…私…アメリーと申します。ルイ様、少しお時間よろしいでしょうか…」
どうやら、ルイと話をしたかったらしい。
ルイは少し困った顔をしていたけど、私が小声で「私は大丈夫。行ってきて…?」と伝えると、名残惜しそうに繋いでいた手を離した。
まだ婚約したわけではないし、婚約しても令嬢と全く関わりを持たないわけでもない。これは貴族として当然のたしなみだと分かってはいた。
(それでも…嫌なものは嫌だな…)
私はざわつく胸を抑えるように、その場を早足で後にした。