第2章 *始まりの鐘*
「プリンセス」
私が庭を歩いていると見知らぬ男性に声を掛けられた。
「初めまして、プリンセス。私は東の小国の王子、リアムと申します」
「初めまして…私は──
「存じ上げております。プリンセス」
シリル王子は「お疲れでしょう。どうぞ」と言って私にグラスを差し出してくれた。
「ウィスタリアでのご活躍を耳にし、一度お話してみたいと思っていました」
「ありがとうございます。そんな風に言ってもらえると嬉しいです」
(優しそうな方だな……)
「私の国は規模こそ小さいですが、宝石が有名なのです」
「そうなんですか…是非一度見てみたいです」
「ええ…すぐにでもプレゼントして差し上げたい」
シリル王子は私の話を熱心に聞いてくれる紳士的な方だった。
(酔いが回ってきたのかな……少し体が熱くなってきちゃった…)
あまりお酒は得意ではないけれど、貴族と挨拶をする度にシャンパンを勧められ、断ることもできずつい沢山飲んでしまった。
(そろそろルイも話し終わってるかな…体調が悪くなっちゃう前に帰ろう)
「リアム王子、今日はありがとうございました。私はそろそろ御暇しますね」
「はい。こちらこそありがとうございました」
私はくるりと背を向け、ダンスホールへと歩きだした。
でも……
_______________ゴンッ…!
私がルイの元に帰ることは、なかった。