第5章 *君が笑わない世界*
全てが繋がった。
婚約を解消しようとしたのは俺が孤児院で育ったと国民や他国の貴族が不意に知ることにならないように。
ウィスタリアを出ていくと言ったのも、ユイが俺のそばにいればいつその噂が出回っても可笑しくないから。
どこからその情報を手に入れたのかは分からないが、どこかの有能な情報屋があちらにもいたんだろう。
やっぱり、ユイは自分が楽になる為にこの国を出ていこうとしていたわけじゃなかった。
全部全部、俺の為だったんだ
初めて知った事実に言葉が出ない。
ユイを苦しめていたのは俺だ。
「で、これを知ってお前はどうする」
珍しくいつもより少し真剣味を帯びたシドの声が耳に届く。
ユイにどんな言葉をかければいいか分からない。
どうやって助けたらいいのかも分からない。
でも、これは分かった。
ユイに隠し事をせず、全てを打ち明けたとしても、国民に隠しているのなら、それはユイに重りを持たせているのと同じだ。
いや、その前にこの事を打ち明けずに国王になろうとしていた俺の考えが馬鹿だったんだ。
今俺がやる事は一つだけ
「明日、ちゃんと皆に伝える。俺が孤児院で育った元庶民だって」