第5章 *君が笑わない世界*
「は……?」
拍子抜けした声が口から漏れた。
「今教えてやるって、まさかお前勝手にユイのことを調べたのか」
そうは言いながらも、シドが依頼ではなく自分から何かを調べるなんてそんな面倒なことする筈ないと分かっていた。
「ンなわけねぇだろ。俺は自分以外のことは依頼されないと調べねぇ」
案の定わかりきっていた答え。
では何故──?
「ま。そこら辺のことは話せねえ。仕事の話になるからな」
「…わかった。で、リアム王子について分かったことは?」
「そう急ぐな。結果から言うと、プリンセスはあのリアムとかいう男に脅されてる」
「脅されてる…?」
それは俺との婚約を破棄してウィスタリアを出ていくくらい一大事だったのか。
「なんだと思う?」
もはやこの男が腹が立つ笑みを浮かべていることなんてどうでもいい。ユイは何にあんなに怯えているのだろうか。
考えても考えても答えは出なかった。
「時間切れだな。答えは、お前についてだ」
「俺…?」
プリンセスはな、お前と婚約したら自分の臣下が「ウィスタリアの時期国王は孤児院で育った」と言いふらす、と脅されてるんだよ