第5章 *君が笑わない世界*
〜ルイside〜
「ルイ様、次の公務はシュタインへの訪問となります」
「ああ、すぐに向かう」
晴れた日の昼下がり、俺はいつものように公務をこなしていた。
ユイの公務が限られてから、俺は以前にもまして忙しくなったが、もうそれも慣れてきたところだ。
「お身体の方は大丈夫ですか?」
ジルは毎日のようにそう聞いてくる。自分だってユイが行く予定だったサロンへの対応などに追われているというのにだ。
「大丈夫。ジルもたまには休息を取って」
「貴方に言われると説得力がありませんよ…?」
「俺はもう慣れてきたから問題ない。それじゃあ、行ってくる」
「はい、お気を付けて行ってらっしゃいませ」
ジルに見送られ、馬車が動き出す。
馬車の中からユイの部屋を見てみるけど、カーテンは閉まったままだった。
(食事もあまり喉を通っていないと聞いたから…そろそろ体が持たない筈だ。帰ったらユイの部屋によってみよう)
よってみる、と言っても実際に会うわけではなく、扉越しに話しかけるだけだ。
それでも、今日は何か返事をしてくれるかもしれない、そう思い、移動のあいだ、ユイに何と話しかけようか考えていた。