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【イケメン王宮】氷の魔法にかけられて

第5章 *君が笑わない世界*


〜ユイside〜


「ルイ様、次の公務なのですが──


「ああ、わかった。これが終わったらすぐに行くから馬車を用意していてくれ」


暗い部屋の向こうから聞こえるルイとジルの声。
私がこんな状態になってからもう一か月がたとうとしている。
その間私はほとんど公務をすることが出来ず、特に他国への訪問、視察などは全てルイ一人がやっている、とメイドさんは言っていた。

私はあれから男性と喋ることが出来なくなってしまった。
お医者さんによれば男性恐怖症だという。


「ユイ様、お食事の時間です」


メイドさんが食事を持ってきてくれるけれど、私は食べる気にはならなかった。


「ありがとうございます……」


「ユイ様、ここの所ほとんどお食事を取られていないようですが…食事はちゃんと取られてください」


「はい……」


このメイドさんは私がプリンセスになってからずっとお世話になっているメイドさんで、私が執事であるユーリと会うことが出来ない今、お世話をしてもらっている。


「私がとやかく言える問題ではありませんが、みんなユイ様のことを心配なさっています。そうかご自身の体を大切になさってください」


「すみません…」


私のことを心配して言ってくれているのは分かるし、その気持ちは嬉しいけど、ルイがつらい思いをして公務をしているにに私だけゆっくり食事をとるなんて出来ない。


(あの日、ルイを突き飛ばしてしまったことも謝れてない…)


何も出来ず、ただ大切な人を苦しめることしかできない自分に腹が立ち、涙が溢れそうになる。


「こんな状態の私を誰が必要としてくれるんだろう…」


「ユイ様……失礼いたします」


心の中で言ったつもりだったが、どうやら声に出ていたらしい。メイドさんは私の事をきつく抱きしめて言った。


「私は同じ経験をしたことがないので貴方様の心の傷を分かってあげられません。ですが、これは分かります。ルイ様が、私が、ユイ様を必要としています。そのご様子だと、一人で色々抱えこまれているのでしょう?」


大丈夫です。貴方の居場所は私が、私たちが、作りますので


「……っ…ぁ…」


涙があふれて止まらない。
私はしばらくそのまま泣き続けた。
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