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【イケメン王宮】氷の魔法にかけられて

第4章 *目覚めの時と暗闇*



その時、シーツが擦れる音がして顔を上げる。
そして、ベッドの上のユイの睫毛がゆっくりと動いた。


「っ!ユイっ…!」


その瞳に光と感情はない。


「ユイ…ごめん…俺がついていれば…こんな事には…」


流れた涙はぽたり、と零れ落ちシーツに小さなシミを作った。
それを見たユイは何か言いたげに、ベッドから起きようとするが起き上がることが出来ない。


(こんな…起き上がれなくなるまで………)


ユイがこんな状態になっている今、自分が泣いている場合ではない。一番泣きたいのはユイだ。
そう思い、涙を引っ込めてユイの体を起こす。

その時、ふいにユイの目線が俺のシャツへと向かった。そこには昨日ユイを運んだ時の血がついている。


(そうだ…昨日着替えないまま寝てしまったんだ…血を見られるとまずい。何か嫌なことを思い出してしまうかもしれない)


だが、そう思ったときにはもう遅かった。
ユイの体は震え、頬に一筋の涙が伝う。


「ユイ……」


こんな状態になっているユイを見てもどう言葉をかけていいか分からない。そんな自分に腹が立って仕方がなかった。
それでも何かしてあげたい、と思いユイの震える体を抱きしめる。




だけど、次の瞬間その手は振りほどかれた。




「お願い…1人に、させて。今は誰とも会いたくないの」




何が起きたか分からなかった。
どんなに酷い罵声でも浴びせられる覚悟はしてたつもりだった。でもどこかではユイなら大丈夫、ユイなら自分を拒絶したりしないと思っていたのかもしれない。


バタンッ──


ユイの部屋を出た後、俺は扉の前から立ち去ることができなかった。
こんなことになった原因は自分で、結局最悪の結果になり、ユイに何も言葉をかけてあげられない。なのに今ここから逃げるように立ち去るのはどうしても出来ない。

と、その時扉の向こうからユイがすすり泣いている音が聞こえてきた。
やがて堪えきれなくなったのか声をあげて泣き始めた。
俺はその時分かってしまった。




ユイの心は壊れてしまったのだ




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