第4章 *目覚めの時と暗闇*
「ねぇ、ルイ。どうして助けてくれなかったの?私、苦しかったよ。あんなこと、されたくなかった。どうしてルイは他の人のところに行っちゃったの?」
目の前のユイは静かに涙を流している。
なのに俺は何も言えないただ立ち尽くしてそれを見てるんだ。
「酷いよ、ルイ。どうして来てくれないの?どうして何も言ってくれないの?」
貴方は私一人助けられないのにこの国の人々を守れるの?
「………っ…!」
俺の部屋じゃない。だけど見慣れている部屋。ユイの部屋だ。
「夢……」
窓の外には朝日が覗いている。
(あの後そのまま寝てしまったのか…)
目の前には穏やかな寝息を立てて眠るユイの姿。その顔は昨日よりも落ち着いているように見える。
「私一人守れんなくてこの国を守れるのか、か…確かにそうだ…」
直接ユイに言われたわけではない。ただの俺の夢だ。
それでも、ユイの言われている気がしてならなかった。
「ユイ…ごめん…ごめん…俺は本当に国王になれるのかな……」
流れた涙はぽたり、と零れ落ちシーツにシミを作った。
それをみたユイはベッドから起きようとするが、昨日の今日で動ける筈がない。
(ベッドから起き上がれないほどまでされたのか……今は俺が泣いている暇じゃない。一番泣きたいのはユイだから)
そう思い、涙を引っ込めてユイの体を起こす。
その時ユイの目線がふと俺のシャツに向いた。そこには昨日ユイを運んだ時についた血が僅かに付いていた。
(そうだ、昨日着替えずに寝たんだ…ユイが何か嫌な事を思い出すとまずい)
でもそう思った時にはもう遅く、ユイの体は震え、その顔は絶望に満ちていた。そして、頬に一筋の涙が伝い、それはとめどなく溢れ出す。
「ユイ......」
何も出来ない自分に腹が立ってしょうがなかったが、だからといってどう言葉をかけたらいいのかも分からなかった。