第2章 Voice the Voice
部屋の中を何となしに歩き回る。
ベッドに腰を下ろしているバージルは、その姿を見つめる。
「人間の歌など聴かん。たかが知れている」
はそれに不服そうに振り返った。
「たかが知れているって…いい歌たくさんあるのに」
「そうか」
返事はすれども興味のなさそうな声。
バージルは、興味のない事には極力関わらない。それを知っているは、息をついた。
「もったいないなぁ…」
バージルはそれに答えず。
は少しふてくされたような足取りで、バージルに近付いた。
隣にすとんと腰をおろす。
それをバージルは横目で眺め。
「好きな声の人間ならいるがな」
と言った。
意外な発言には身を乗り出す。
「えっ誰? 教えて!」
バージルの好きなものを、少しでも私も好きになりたくて。
するとバージルは、顔を向けるとの視線を捕らえ。
にやりと笑った。
「の声だ」
「………わたし?」
ぽかんとする。
バージルは気付かれないよう、の背中に腕を回す。
「お前の声が、世界で一番好きだ」
「ばっ…何言って…」
うろたえる彼女。
バージルはそれにくっと笑うと、気付かれないよう回した腕での身体を引き寄せる。