第22章 ENCOUNT
咄嗟にその姿を追い掛けた。暗い路地に入り、長いコートをひらめかせながら目の前を悠然と歩く彼に駆け寄る。
声をかけようとして、そこでふと、彼の服が家を出て行った時と違う事に気付いた。
神経質な程規則正しい歩調。風をはらむのは青いコート。後ろ姿では確信が持てないが、髪型も何だか違う気がする。
まるで後ろに撫でつけたような…
「…!」
目の前の彼が角を曲がってしまい、姿が見えなくなった。
心なしか焦り足早になる。あれがダンテでないなら追い掛ける必要はないはずなのに、なぜか追い掛ける必要がある気がした。
この道は入った事がない。見失ったらどこに行ったかわからなくなるなと思いながら曲がり角を曲がった。瞬間。
ざり、と音を立てて足が止まった。
「………」
息切れ。驚愕。鼓動。確信。
喉に突き付けられた刀。光る刃。震える手。斬り裂かれる未来予想図。
脳裏に描かれる鮮血。
「………ダン…テ…?」
「誰だ貴様は」
その声は、ダンテよりも冷えて聞こえた。
その顔は、ダンテよりも青白く見えた。
その視線は、ダンテよりも鋭く貫いた。
「答えろ」
声が、刺す。
彼はダンテじゃない。
ダンテが赤い色を纏う人なら、目の前のこの人は氷のような青い色を纏う人。
同じ顔をしているのに。全く正反対。
どうして一瞬でもダンテだと思ったのだろう。この目の前の「彼」はダンテに似ているのに全く似つかない。
いつかに聞いたダンテの双子の兄だと気付くのに、時間はかからなかった。
2008/01/16
(ダンテとカレカノだったのにバージルに目をつけられてわあわあなる設定のプロローグ。のイメージで書いた突発夢)