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【DMC】バージル夢短編集

第22章 ENCOUNT



見るからに眠たそうに仕事に出て行くダンテを、私は「隙突かれて死んじゃうよ」と言いながら見送った。

夕方までには帰って来るはず、と大体の予想をつけてドアを閉める。ダンテは、余程大物の悪魔でない限り、仕事に一日をかけた事はなかった。


掃除はダンテがいない間にするのが一番いい。汚れというよりも何ともわからないがらくたが多い部屋の掃除をてきぱき済ませる。

以前のダンテは散らかすのが得意の仕事で部屋中すさまじかったが、注意してからは片付けを心がけるようになっていた。
それほど時間もかからず掃除を済ませると、買い物に出掛ける準備をする。冷蔵庫の具材と相談しながら夕飯のメニューを考え、コートを羽織り。

今日は寒い。シチューでも作ろうかと、家を出た。



スーパーと自宅が近い為、財布が入る程度の小さな手提げを持って外に出た。
温度を奪う風に身を竦めながら店へと急ぐ。

ダンテってばこんな寒い日にあんな服で…寒くないのかな。
時々体がおかしいんじゃないかと思う程寒さをものともしない彼は、まさに「子供は風の子」という言葉がぴたりと当て嵌まる。
いつも温かい手の平をしていて、包まれると冷えがやんわりとほぐれていって、安心する。
その時間が密に好きだった。


やや急ぎ足で歩いていると、ふとやけに冷たい風を感じた気がした。
無意識に首をめぐらせてぎょっとする。

「ダンテ…?」

淀みのない足取りで颯爽と向かいの通りをすり抜け、狭い路地に入って行く一人の男。
輝く銀髪。アイスブルーの瞳。誰もが振り返る整った顔立ち。

有り得ない、と思った。
彼の今日の仕事場所は解っている。こことは全く正反対の、もっと遠い場所だ。
しかも彼はつい1時間程前に家を出たばかり。もう仕事が終わったなんて有り得ない。

有り得ないのに、あの人間ならざる容姿をしているのはダンテしか知らない。

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