第20章 神か悪魔か (軍隊パロと人体実験)
「全く…こう突っ込み隊長任されちゃたまんないわね」
警戒のサイレンがけたたましく鳴りしきる中、私は呟いた。
ここは敵基地内。眉目秀麗完全無欠の総司令官の指示のもと、私はここであるモノを、存在を探していた。
ヒビの入ったコンクリートの間を歩いていく。真っ赤なランプが辺りを照らす。
警戒しながら道の先へ進んでいくと、「第三実験室」という文字が目に入った。
それを確認し、私は無線を掴む。
「こちらデルタ。第三実験室発見しました」
「了解。内部確認、目標物を発見次第抹殺しろ」
無機質を思わせる声。バージルという名の総司令官率いる隊が私の所属する場所だ。
彼は、軍の中でも冷静で的確で確実な指示を出す事で有名だった。
更に顔立ちは人間離れしている程に整い、なのに欠片も驕らず、一目も二目も置かれているエリートである。
「了解。室内確認に入ります」
ぶつ、と無線を切り、手にある銃を握りしめる。
扉は見たところ頑丈で、手動では開きそうになかった。扉の横にカードキーとスイッチがある。
カードキーの方はあの天才総司令官が何かちょいちょいやって壊していた。ので、扉を開けるだけなのだが。
スイッチを押して普通に開いてくれればいいが、もし開かなかったら爆破だ。
「やなんだよねあれ…耳使えなくなるから」
言いながらスイッチを押すと、存外すんなり扉は開いた。
一安心して、銃弾を確認してから中に入る。
薄暗い。
その時、がが、と雑音がして無線が入った。
「その周辺に生命反応がある。気をつけろ」
聞こえてくる低い声。了解、と呟いて、隙間無く視線を走らせる。
この施設は人間の夢だった。そして人間の凶器でもあった。
いつだって人間の作り出す夢は魅力的で、それでいて恐ろしい凶器だ。
輝かしい可能性の分だけ残酷な危険を孕む。強い光は強い影を残すように。