第17章 いちのいのち (医者パロ)
きぃ、と音がした。
ハッとして振り返り動きを止める。
同時に現れた人の姿を認め、少しだけ気分が沈んだ。
汚れた所を見た事がない、真っ白な白衣。太陽を受けた白衣よりも輝く後ろに撫でつけた銀髪。医者だというのに、外に出た事がないかのような真っ白な肌。
それに清潔そうな薄い水色のシャツ。きっちり締めた藍色のネクタイにダークグレーのパンツ。
の担当医であるバージルが、そこにいた。
「安静にしていろと言ったはずだが」
「……外に、出たくて…」
「俺の言う事が聞けないのか?」
見透かすような青い瞳がこちら見つめる。彼はから5メートル程離れた場所から一歩も動いていないのに、何だか気詰まりがする。
耐えられずには視線を街に戻した。
行き交う人々。いのちいのちいのち。
どうして自分が外に出たかったのか、急にわからなくなった。
「…もう、帰ります」
言いながら、まだ外を見つめる。空を見上げる。
こつ、と靴音がして、バージルが隣に並んだ。
はちらりと彼を盗み見た。
女性看護師がきゃーきゃー言うのもわかる気がする。この医者は、とても綺麗だから。
一目見ればあまりに整いすぎた容姿に見惚れて立ち止まる。声を掛けられれば一日中幸せになる。
それは看護師だけでなく患者にも言える事で、てきぱきと仕事をこなし意外と世話焼きな彼は、幅広い年代の女性に人気だった。
男性からも尊敬の眼差しを注がれ、更に仕事も完璧にこなすのだ。もはや病院のアイドルである。
「何だ」
「あ、いえ…」
目を合わせられない。一瞬視線が交わっただけで、顔が熱くなる。
そこにいるだけで絵になるような彼の隣に自分が並ぶのは、あまりに場違いな気がした。
もうここにいる理由もないし部屋に戻ろうと思い、はフェンスから離れる。
失礼します、と少しだけ頭を下げて歩き出すと。