第17章 いちのいのち (医者パロ)
ましろい、ましろい、ましろい。
壁。布団。服。全てが白いここは、まるで天国かのよう。
窓から差し込む光が反射して白を際立たせ、鳥のさえずりが遠くから聞こえ、その中では、静かに目を閉じていた。
どくん、どくん、命の鼓動。以前は当たり前だったこの響きが気になるようになったのはいつからだろう。
どくん、どくん。
これで最期かもしれない。次の瞬間にはもう動かないかもしれない。
終わりを感じ、死が近いからこそ、生を嫌という程感じる。
どくん、と一度鼓動してそれっきり停止を始めたとして。
そうしたら私は、何を思い何を見るのだろうか。
す、と目を開けた。
見慣れた白い天井と点滴。動かした時のちくりとした痛みにも、もう慣れた。
窓の外は晴れていて、車が行き交い、人が歩き、自転車が走り、子供は笑い、お年寄りは犬の散歩をし、お母さんは買い物をし、お父さんは仕事から帰る。
こんなにも、こんなにも、あの人たちは健康であるのに。生を感じて生きてなどはいないのだろう。死を感じてなどいないのだろう。
ただ、過ごす。
暇つぶしをするように過ごす。
「……いいな」
羨ましくなって、無性に動きたくなった。
の病気は激しい運動をしない限り行動をさほど制限されない。ためらわずベッドから足を降ろす。
しかしそこでふと思い出した。確か、恐ろしく顔立ちが整った担当医が、今日は体内の調子が悪いから出歩くなと言っていた。
体調は、悪いだろう。
だが気分は悪くない。
まるで別モノのように正反対の意思を持つ自分の身体。一瞬戸惑うが、やっぱり外に出たくて病室を出た。