第1章 MILK CANDY
しばらくすると、がバージルを叩き始めた。
なんだ、と思い薄く目を開けて見ると、真っ赤な顔で涙目になっている。どうやら息が苦しいらしい。
バージルはまだまだ平気だったが、は口付けの時の息つぎの仕方が上手くないようだった。
それもまたおかしくて、べしべしと叩かれながらほくそ笑む。
これ以上やると後が怖い。あまり続けると自分の熱の自制がきかなくなりそうで、バージルは素直に体を離した。
ぐったりとしたは、飴どころではないようだった。
バージルにしがみつき、肩で息をし。
きっとバージルを見たと思うと、思いっきり彼を突き飛ばした。
真っ赤な顔で睨みつける。
バージルはそれに怯みもせずを見返すと、自分の唇をするりと舐めて言った。
「なかなか美味い飴だ」
「…………っ!ばか!!」
はぎゅっと拳を握ると、部屋を飛び出してしまった。
バージルとすれ違いざま、渾身の力で彼を叩くのも忘れない。
バタァン!!!
とものすごい音でドアが閉まる。
バージルは、に叩かれてじんじんする背中をものともせず笑った。
全く、からかいがいのある面白い奴だ。
それから数日間、はバージルと口をきかなかったという。
2006/10/22