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【DMC】バージル夢短編集

第5章 火傷



「火傷したでしょ」

「………」

バレていた。
強い口調で怒るように、は言った。
バージルはまだ目を合わせない。

「こんなもの何でもない」

「嘘つき。痛いくせに」

「なぜわかる」

「勘」

拍子抜けしてを見ると、その隙に彼女はバージルの手を取った。
火傷しているところを確認すると眉根を寄せて、問答無用で流し台に引っ張る。

流れる水。それに晒された火傷の痛みは、瞬く間に消えていく。
バージルは知らず息をついた。あの痛みは耐えられないものでもないが、耐えるものでもない。


「何ですぐに冷やさなかったの」

静かには聞いた。

「…すぐに治る」

「それでも痛いんでしょう?」

「我慢すればいい」

「またそんな強がって。痛いより痛くない方がいいのに」

「…………」

バージルの手は掴んだまま。水は絶え間なく流れる。

「痛いなら我慢しなくていい。人の心配する前に自分を大事にしなさいよ」

「だが、そのせいで迷惑がかかるのは…」

「馬鹿。バージルはただでさえ手がかからないんだから、迷惑くらいかければいいの」

切実な思い。バージルが怪我をしたら心配する人間がここにいるのだと。

そんな事できるかと思った。
自分の世話くらい自分でできなくてどうする。他人に迷惑をかけるのは嫌いだ。
しかしバージルは、不意に泣きたいような気分に駆られた。

「痛みがなくなるまで冷やしててね。今日の夕飯は私が作るから休んでいいよ」

言葉に心が熱くなった。




2007/06/28
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