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【DMC】バージル夢短編集

第5章 火傷



夕食時。バージルはキッチンに立ち、いつものように料理をしていた。

フライパンに熱された油。中に入れられた野菜が騒々しく音を立てている。
そんな中、明日の事をぼんやりと考えていると。
不意に油が弾かれて飛んだ。

「っ…!」

反射的に手を引いく。顔をしかめ手を見遣ると。
果たして、そこには赤い跡が。
思わずため息をついた。


少し油を拭いただけの手は、次第に熱を持ち熱く痛くなる。火傷なんてどれくらいぶりだろうか。

しかしだからといって冷やす気はさらさらなかった。
半分は悪魔の身体だ。そのうち勝手に治るのはわかっている。
そのスピードは人間よりも遥かに速い。

痛みを我慢すればそれでいい。わざわざ時間と水を無駄にすることはない。
そう考え、燃えるように痛くなり始めた手から意識を離すように料理を続ける。

すると。


「いいにおーい。何か手伝う?」

がキッチンに入ってくる。バージルの手が止まった。

火傷しているとわかれば、は心配するに決まっている。
絶対に嫌だった。こんなに小さな事で余計な心配はさせたくなかった。
それに何より、火傷をした自分が格好悪く思えて。

大丈夫。火傷の手をさりげなく隠して、平静を装っていればいい。

「もうすぐできる。皿を取ってくれないか」

「はーい……ってちょっと待って」

「?」

つかつかとは近寄ってくる。
手を隠す。服で見えないはず。

手を置いたところは火元に近く、まるで焼けているようだった。
涼しい顔で耐える。

がバージルのすぐ横に立つ。じっと見つめる。
バージルはそれに気づきつつも視線は合わさない。それでも変わらず注がれる視線。
バレているのだろうか。全てわかっていて黙るような沈黙にぞくりとする。

そして。

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