第4章 チョコレートの渡し方
「美味いな」
「…っ! 美味いなじゃない!」
怒鳴られて顔を上げたバージルは、真っ赤なを見てにやりと笑って。
もうひとつ口に入れた。
「もともと俺に渡るものだったのだろう。俺が食べても別に問題はない」
確信めいた言葉。
全部お見通しなのだろうか。
だが今更認められなくて、は一歩下がった。
「だから違うってば! 私のなの!」
「いい加減諦めろ」
「そっちが諦めてよ! 返して!」
「食べさせてやろうか?」
「いらないっ!」
「それなら、俺のだ」
わけのわからない屁理屈。
はぐっと言葉に詰まった。
らちがあかない。いずれにしろバージルに渡したのだから、当初の目的は果たせた。
しかしそれが良かったのかどうかは、にはわからなかった。
2007/02/10