第32章 Nightmare (逆ハーバージル落)
なぜ最後まで言わない。
俺は、お前の為なら何だってしてやるというのに。
まだ遠慮しているのか?
そんな遠慮は邪魔なだけだ。
「一緒にいてやる…それで恐怖が晴れるならな」
「……でも…」
「俺が一緒にいたい。誰にも文句は言わせない」
「…………」
は黙り込む。
すぐ横にあるバージルの頭にそっと触れた。
いてくれる?
どんな時も。
回りが暗闇で、お互いが見えなくても。
バージルの髪をすいた。
さらさらと流れる美しい銀髪。
月明かりに照らされたその髪は、私が夢の中で請い焦がれた優しい光。
―――何だ。
光が隣にあるならば私はもう、大丈夫だと。
そう思って、はバージルに身体を預けた。
「いてくれるの…?」
バージルは目を見張る。
その小さな声に、嬉しそうに微笑んだ。
「無論だ」
その笑顔はに見られる事はなく、ただ優しい手が身体を撫でた。
触れられた所が甘くしびれる。それだけで、には十分だった。
光があれば、もう迷わない。
強くしなやかで、美しい青い光が側にいるなら
迷わない。
それ以降、が悪夢を見る事はなかった。
2006/01/10