第32章 Nightmare (逆ハーバージル落)
「………」
は、布団の前でしばしの間立ち尽くしていた。
部屋に明かりはついていない。
外からの明かりは月明かりだけで、部屋はかすかに幻想的な雰囲気を漂わせていた。
―――やだな…
夜が来るのが嫌だ。
夜は嫌い。
それでもする事がなくて。明かりをつけて何かをしてしまえば、あの二人が心配して部屋を訪ねて来るのは目に見えていて。
は仕方なく、布団に潜り込む。
「………」
―――また見るのかな。暗闇の夢を。
慢性的な不安がを包んでいた。
ゆるゆると暖まる布団とは逆に、冷えていくような心と気持ち。
今日は見たくないと。
そう思っても、無意味。
目を閉じれば暗闇が視界に広がり、は眉を寄せる。
寝ないで起きていられるだろうか。
でも、この前寝ないでいたら二人に少し心配された。心配はかけたくない。
なら、眠るしか―――
視界を覆う闇はやがて、の意識をも覆っていった。
ゆっくりと眠りにつく。
悪夢が始まる。